墓石事例集.24「薬師寺 北木石階段」

○月×日 薬師如来は医王如来の別名を持ち、私たちの身と心の病気を救って(ケアして)くださる仏様―と教科書的な説明を事前に読んでいても、 1300年もの時間を越え今もなお放つ威容と存在に対峙、加えて日光・月光両菩薩様の流れるような美しいお姿に接すれば、ただただ、合掌。
私の時間もその場に静止してしまいます。

この度は、国宝、かつ世界遺産にも認定されている、薬師寺大講堂に噴出したエフロもどきの除去。
創業嘉示元年(1848)、加えて明治の初期より薬師寺御用達として、同寺に関わる石材工事を施工されている老舗石材店様よりのご依頼の物件です。

復興完成(補修後)してわずか二年余りでエフロが噴出。
スケール化(固化)まで引き起こしている、厄介な事例です。
ケアは、 本コラムでも過去2回ほど(墓石事例.2建築事例.22等)紹介しているパターンとほぼ同様の仕様であるとはいえ、 さすがに歴史的遺産という、その存在を考慮すれば、いやがうえにも一層慎重な注意力が要求されるというものです。

進行は心配されたほどのひび割れ、欠け等は少なかったものの、覆う地衣類等の除去は慎重を極め、気合と、心を込めました。

薬師寺北木石階段のシミ汚れ 薬師寺北木石階段のシミを洗浄除去
施工前 施工経過

その手順は、
  1. 除塵・必要か所を養生します
  2. 清水による入念な洗浄。
  3. エフロ除去用の特殊ケミカルを塗布。
  4. 除去剤の効果による乳化現象を確認しながら、
    スクレーバーで丁寧に除去・ブラッシング。
  5. 再度清水で十分に洗浄し、乾燥させます。
  6. 乾燥を確認した後、今度「エフロ」を出にくくするためにも、浸透性の保護剤を塗布します。

大講堂のご本尊彌勅三尊像に見守られながらの階段、踏み石、ケ込み石等の洗浄でしたが、物珍しさもあったのでしょう、 「おっちゃん、何してんの!?」と、小首をかしげた稚児の問いに、作業の手を休め「きれいにしてるんだよ」とだけ答えるのがやっとでした。

大講堂は嘗(かつ)て学僧が参集して経典を講賛した伽藍と聞きますが、 当然ながら現代にも深く学ぶべきことが多々あると思われました。

薬師寺回路を廻り、竜宮造りの動きある美しさに、今一度合掌して作業を終えたのでした。

※ 石材呼称は、御影石、大理石、ライムストーン等の通称に従います。


古いお墓の経年劣化、諦めないで下さい。綺麗に磨きます!

ご先祖様代々のお墓を綺麗にお守りします。

ドレストン QR情報
ドレストン QR情報
出版書籍
書籍「石の汚れ、あきらめないで」
石物語 石材ケアの今
石の汚れあきらめないで!
著者:新田倖石
発行:日本石材工業新聞社
価格:4,000円
内容:石材ケアの現状と事例集。石材店・墓石店のプロ用「石材ケア マニュアル」
石の汚れの知識と石材の簡易辞典、石材業必見の一冊