墓石事例集.2「御影石外柵の経年エフロ除去」
先日、日本石材産業協会主催の「お墓ディレクター勉強会」を聴講しました。
特に石材加工とお墓の施工関係では、具体的に施工順序から建立・完成まで、最近の耐震施工方法の考察まで要が尽くされ、充実した時間でした。
しかし、石材ケア・メンテナンスの考察、コメントが少なく物足りなく感じました。「ディレクター」氏はそこまでなのか、当日の時間配分ゆえなのか、私はもちろん後者の理由だと思いたいですが・・・。
さて今回は、エフロ。すまわち「エフロレッセンス(Efflorescence)」です。
墓石、建築石材等にかかわらず、表面に白く浮き出、また固まる必至の現象。これを「白華」と訳した先達の心意気に感じ入りますが、実に厄介な代物なのです。というのも、この現象が経年進行すると、いずれ素材の破壊・剥離につながります。
例えば高層ビルの外壁タイル剥離・落下、また高速道路の橋脚の剥がれ亀裂現象などという危険があるからです。
施工前 施工後
- 墓所外柵のエフロ=「ツギトロ」施工の部位からなのでしょうか、
建立後、比較的短期間にもかかわらず現れています。 - 敷石=(御影石)の目地周辺から出始めて、拡大しています。
ケアはともに、スケール化(固着化)したものは、スクレーバー等で慎重に除去。
その後、エフロの程度に合わせたケミカル除去剤で、状況を考えながら塗布を繰り返します。特に鏡面仕上げの場合には、表面の光沢を飛ばさないように配慮しなければなりません。
エフロの発生メカニズムなどの考察については後に示しますが、かの「お墓ディレクター検定用テキスト」にも、わずかながら記述がありましたので、ご参照ください。
(第一集板593〜596ページ、第二集版18ページ)
エフロ=エフロレッセンス(白華現象)
エフロレッセンス発生は主に、
A発生は内部から、
Bセメントモルタル(コンクリート)内部からのケースがありますが、
私たちにとっては、後者の場合が大切です。
発生メカニズムは、セメントに含まれる石灰成分と水との反応でできた水酸化カルシウム(CaOH2)に空気中の炭酸ガス(二酸化炭素)が反応して炭酸カルシウム(CaCo2)を主成分をした化合物ができることによるものと考えられます。
目地、オビトロなどに使われたセメントモルタルの石灰成分の流出によって、そのアルカリ性のためにモルタルのP/H(水素イオン濃度)が下がり(中性化)強度が落ち、もろく、劣化しやすい状態になることが留意点として挙げられます。翻って、エフロ除去剤のほとんどのケミカル剤は酸性を示すものが多く、使用するに当たってはいくつかの問題点があります。
- 大理石、石灰岩などアルカリを示す素材には、使用を控える
(光沢を落とし表面を傷める) - 御影石はその素材に鉄分が含まれていて、サビの発生を呼び込むケースがある。
流出してしまったエフロはできる限り速やかな除去は当然として、特に、エフロ自体を発生させない施工を実施することが大切です。
前述のように「水」と「石灰」とが反応してできるため、その水路(みずみち)、侵入路を絶つことによりずいぶんと抑止できる可能性があります。このことは、水分のシミ上げを防止することも含みます。
こうした水分抑止、防止のためのケミカル類が各メーカーから幾種類も市販されています。読者のみなさんも、エフロの発生メカニズムを考慮し、メーカー推奨品を適材適所にご利用ください。
ネバーギブアップです!
日本石材新聞 掲載記事
日本石材新聞(2015/5/5)
今回の御影石外柵の経年エフロ除去
の記事が掲載されました。
古いお墓の経年劣化、諦めないで下さい。綺麗に磨きます!