建築石材の実例集.27 「壁の変色現象」

○月□日 砂岩は、水成岩・堆積岩に属し、その成分に珪酸(SiO2)を多く含む点は、花岡岩の性質に近いと考えられますが、 特に吸水率が高く、加えて、その保水性の高さはご存知、同列の多胡石も同様。「石材ケア・メンテナンス」から見れば、厄介ものといえます。

今回のスキルは、大手自動車部品メーカーの別棟、クリエイティブセンター正面ホールの壁面。12年の経年により噴出している、 カビ・地衣類等による黒色変質現象の除去事例です。

陽の当たる正面エントランスは、通常北面に多く噴出する、砂岩の保湿性故のカビ、コケ胞子などに起因する黒色変質よりも、 変質部位に水打ちした時の特有のカビのキナ臭い異臭を、強烈に発しています。
「う〜む。俗にいうバクテリアの繁殖もありますね・・・?」と、
早速部位を決めて、テスト施工と相成りました。

壁の変色現象 壁の変色現象をクリーニング
施工前 施工後

砂岩の主な構成成分である石英粒子の独特な輝きは既になくなり、全体にどんより黒褐色のまだらな黒色変質は、当初の設計意図とはほど遠いものと思われました。

施工手順は、何時もの除塵から始まり、コケ・カビ専用除去剤に加えて還元剤を使用することにより、何とか全ての部位を除去することができました。

施工の際には、社内研修などで訪れた同社社員の方々が、
「きれいになりましたね・・・。ず〜っと、この模様はデザインされたのだとばかり思っていました・・・。違ったんだぁ!」と、 大量の書類を抱えながら、マジマジとご覧になっていました。

今後注目必須の技術「JSMAの光触媒」

本案件は、本紙7月25日号で紹介された「全国石材メンテナンス協会(JSMA)」の高機能部会が担当した、 「センター外部ガラスに対する光触媒施工」の完了のお打ち合わせにうかがった折、ロビー壁面にこの変質現象を発見。 ご提案、お見積もり、そして施工実施となった案件です。

さて、ご存知「光触媒」とは、世界に冠たるナノテクですが、実はわが国初の貴重な技術。酸化チタン等を触媒として、空気中の水と酸素から活性酸素を作り出し、強い酸化力で汚れ(有機物)を分解し、無害な炭酸ガスと水に変えるというもの。
その効果のひとつの「超親水性」は、雨水などによる自浄作用(セルフクリーニング)を起こすために、汚れ除去の面からも注目されています。

特に当地・中部地区では、愛知万博会場でのエコ技術として、数多くの採用事例が観られ、「元気」の象徴・中部国際空港(セントレア)、世界のトヨタ等への技術採用、 さらにはJR新幹線車両などへの取り込み等、昨今飛躍的な技術進展が注目。多くのビジネスチャンスを生み出しています。

翻って、石材でもそうした技術の応用も、一部に垣間見られ、ここぞと売り込みも盛んな気配です。

ただ、石材の最大の特徴である「細孔・気泡」、さらには天然素材に対してのその有効性については、「若干の疑問をなしとしない」というスタンスを私は持っています。
とはいえ、日進月歩ならぬ"分進時歩"のナノテクの世界。石材に対するスキルアップも、ある意味で時間の問題か、と期待ができるのも事実のようです。

やはり、「石の汚れ、ケア あきらめないで!」

※ 光触媒については、私の[石材ケア事例集 9ページ]にあります。「保護剤」の項もご参照ください。


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今まで、落ちなかった石材のシミや黒ズミの劣化汚れ・油性スプレーなどの落書きも消します!

石材洗浄はリフォームするより、早く安くお手軽です。
まずは、石材クリーニングの実績 → 施工事例集をご覧下さい。

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出版書籍
書籍「石の汚れ、あきらめないで」
石物語 石材ケアの今
石の汚れあきらめないで!
著者:新田倖石
発行:日本石材工業新聞社
価格:4,000円
内容:石材ケアの現状と事例集。石材店・墓石店のプロ用「石材ケア マニュアル」
石の汚れの知識と石材の簡易辞典、石材業必見の一冊