墓石事例集.26「経年汚れ・汚点抜き例」
○月△日 これまで、数多くの墓石・石材アイテムを通して「石材ケア・メンテナンス」のチャンスをいただき、その都度、様々な汚れ、変質等に遭遇し、時におぬし、何者ぞ!?
とターゲットに問いつつ、各々の案件で所作を続けております。
私どもでは、ターゲットに対する対処法、戦術を以下の四分類に括って考えるようにしています。
(一)水垢、黒ズミ等、特にお石塔の棹石、上台、中台、下台(四ツ石)等のコーナー部位に付着して、経年によるスケール化(固化)しているダメージ・・・ こういった現象は、建立後長年を経たほとんどの墓所のお石塔に見証できます。
(二)コケ、カビ等、いわゆる地衣類(ちいるい)が激しく付着したダメージ・・・ 経年後、あるいは建立場所の環境条件にもよりますが、それらの繁昌は特定の一部位にのみならず、石塔全体に及ぶことがあります。
こうした現象は、時に墓石店さんも含め多くの方が、石材に対するダメージよりも風情
とか風合い
あるいは歴史
と称して愛でることもありますが、個々の感性
という視点では、これはこれで一つの謂いに違いありませんが・・・。
(三)俗にサビ色に変色・変質した部位が散見できるダメージ・・・ この現象も、経年により特定部位、あるいは全体に及びますが、変色ダメージが鉄錆に似ていることから、石材店さん含め多くの方が「錆び(サビ)」という言い方で括っているようです。こうした現象に対処するケミカルなどは、各メーカーから多数発売されています。
(四)「ケア・メンテナンス」修了後に施工されたコート剤、あるいは保護剤の塗布などが仇となって、後日施工部位が斑(マダラ)模様、あるいはモンモン状の現象となって噴出したダメージ・・・ コート剤等は、本来石材をできるだけ当初の現状維持、または汚れにくくするために塗布されるにもかかわらず、です。
このような四分類は、それぞれに対処方法が異なるのはもちろんのこと、こうしたダメージの状況把握は「石材ケア」のスキルを習得する知識・順序としても、最低限必要なことだと考えています。
ちなみに、わがドレストン会では研修を通して、前記一より四までの順序で内容の周知徹底・対処確認を実施しています。
ただし、実際の現場というものは、これら四分類の汚れとその環境が複合して現出していることがほとんどです。
こういった状況を、「複合汚染」と呼び、単一の対処法のみでは解決できないため、文字通り複数の対処方法・手順を、その汚れ環境に合わせ採用しなければなりません。
さて、今回の案件ですが、これは前記の三にあたるのでしょうか。建立後わずか3年で出現した、サビ色変質現象です。
石材に出現する汚点抜き
作業の中でも高レベルの部類と思われますが、ご多聞に漏れず、ご担当石材店さんも当方へのご依頼以前に、入手可能な変色・変質現象の除去剤で幾度となく、試行されたとのこと。
ご苦労に頭が下がりますが、私どもが常々申し上げているいわゆる※「第三次汚染」に繋がりかねないため、こうした対処は適切な情報をお持ちになった上、十分にご留意をお願いしたいものです。
施工前 施工後
- 除塵、必要箇所の養生、清水での洗浄
- 既に施工されたケミカル類の除去作業
- 再度専用のサビ除去剤を塗布、残余サビ部分を除去
- 清水で洗浄後、専用の特殊染み抜き剤でダメージ部位をシップしラッピング
- その効果が確認でき次第、シップを外し清水で洗浄します
この手順でもおわかりのように、通常のケミカル過程のほかに、以前施工されたケミカル類などを除去し施工面へのダメージを食い止めるという諸作業が加わり、かなり厄介な作業になってしまうのです。
熱中症もあわや、という猛暑日の炎天下。短い首筋に濡れたウエスを一巻きしての所作でした・・・。合掌
※ 第三次汚染=施工前の汚れ・素材・洗浄剤等に対する知識あるいは、事前調査不足による、人為的ミスによる石材汚染。例えば、不適切な洗浄剤使用などで、 素材への悪影響やケミカル残留成分による腐食・変質・変色させることなど。→第一次汚染=自然放置状態で素材が汚れること。
第二次汚染=素材自体からの成分が転移して起こる汚染(例=エフロ現象、シール剤等の可塑剤(油分)などの流出拡散現象など)
※ 石材呼称は、御影石、大理石、ライムストーン等の通称に従います。
古いお墓の経年劣化、諦めないで下さい。綺麗に磨きます!
ご先祖様代々のお墓を綺麗にお守りします。