墓石事例集.5「ラッカーとサビの除去」

先日、久しぶりに凛とした心地よい緊張感をを味わう機会に恵まれました。
場所は、「お墓ディレクター検定試験」の受験会場。
整然とした机の配列、試験担当者の端正な物言い・・・。
つまり、その静寂や開始数分前の、あの時間です。

出された試験問題の難易度に悩むよりも、こうした人生の緊張感の一瞬一瞬を味わっている間に、時は過ぎてゆく行くのでした。
閑話休題、今回は墓石の腰石まわりに噴出した「サビ!?」の除去なのですが、
このケースは常に私が注意している、いわゆる「第三次汚染」に属す、厄介なものです。

「汚れの状況を見誤ると、大変なことになる」という典型です。

当初サビ?と状況に困惑された石材店のご担当者は「すわっ!大変、何とかしなければ」と、様々なケミカル(薬剤)等を試してはみたものの、結果に今ひとつ納得できず、思案の結果少しでもサビ色を消し去る事ができるのでは、と何と!腰石と同色系のクラッカーを塗布されたのでした。
施工前の写真で白くなっている部分です。

このようになってしまうと、「ケア」としては、
二重手間以上の作業になってしまうことは、ご理解いただけることと思います。
つまり、施工手順としては、塗布されたラッカーの除去を完全に施し、
その後、吹き出たサビ?の除去との戦いとなるからです。

ラッカーとサビ ラッカーとサビの除去
施工前 施工後

この場合のケアの手順は、
  1. ホコリをとり、必要個所を養生
  2. 清水でたっぷり洗浄(出きれば温水がベターです)
  3. 塗布されたラッカーを専用除去剤で取り除きます
  4. サビの反応を見ながら、ウエスシップで特殊専用ケミカルを塗布。
    ケミカルの浸透、湿潤、乳化、分散の一連の反応待ち、サビ除去の反応を見極めます
  5. 反応結果を確認しながら、清水で十分に洗浄し、乾燥させます

幸いこのケースでは恙無(つつがな)くことが運び、ほぼ1日で除去する事ができました。
ただ、くれぐれも石材に対する「ケア」は慌てず、必ず事前のシミュレーションを怠らず、上手に時間を配分するようにして、果敢なるチャレンジ、トライを行ってみてください。
石の汚れ、恐れずに、決してあきらめないで!

■第三次汚染=言ってみればケアレスミスとなるのでしょうか。
素材に対して付着する自然の汚れを第一次汚染とすれば、素材自体に降雨などの水分が影響成分が流れ出し、他の部位に汚れが転移したものが第二次汚染となります。
たとえば、目地材などから流失し固化する「エフロ」現象、またはシーリング可塑剤の垂れなどです。

これらに対して、第三次汚染は概念としては、明らかに人為的ミスといえるもの。
たとえば、素材に不適当な洗浄剤の使用、またはケミカル類使用後の洗浄が不十分なことで残留成分などが影響し、変色、腐食、損傷などを起こす、などが考えられます。

※石材呼称は、御影石、大理石、ライムストーン等の通称に従います。


古いお墓の経年劣化、諦めないで下さい。綺麗に磨きます!

ご先祖様代々のお墓を綺麗にお守りします。

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出版書籍
書籍「石の汚れ、あきらめないで」
石物語 石材ケアの今
石の汚れあきらめないで!
著者:新田倖石
発行:日本石材工業新聞社
価格:4,000円
内容:石材ケアの現状と事例集。石材店・墓石店のプロ用「石材ケア マニュアル」
石の汚れの知識と石材の簡易辞典、石材業必見の一冊